はじめまして。スパドーニ(芦生)ゆかりです。NYに来て6年になります。その間に、仕事は2回変わりましたし、結婚もしました。振り返ってみると、いろいろなことを体験し、学んだ、濃い6年だったなあと改めて思います。
日本からはるばるNYに移ってきた理由はみんなそれぞれだと思います。「念願かなって!」という人もいれば、しかたなくやってきた人もいることでしょう。私は「背が高いから」、NYに来ました。・・・て言うと、大概「ハハ・・・」って笑われますが、これはマジな話。だから別にNYでなくても、あるいはアメリカでなくてもよかったのですが、たまたまビザをサポートしてくれる会社がNYだったので、NYにやってきたわけです。私の場合「やっと日本から脱出した!」という感じでした。
私は、神戸で生まれて、中学校の入学とともに名古屋に引っ越してきました。中学、高校と金城学院で過ごし、大学は、私にしてみればかなりきばって、南山大学外国語学部英米科に入りました。かなりきばれたのも、背が高かったから。・・・て言うと、また「?」って顔をされますが、そうなのです。愛知県人会のみなさんならご存じの通り、金城=お嬢様学校、で、当時は大学に就職科がありませんでした。金城学院大学は、「良き妻、良き母親になる」ための教育をされていて、「かわいいお嫁さん」サイズから大幅はみでていた私は、こりゃだめだと思い、女子の就職率の高い南山大学にしたわけです。しかも英米科。外資系企業に就職し、背の高い欧米人と、もちろん英語でかっこよく仕事をする予定でした。
めでたくジョン・スワイヤという英国系の船会社(外資系企業!)に就職しましたが、あたり前なことに、名古屋支店の社員は全員日本人。しかも英語は書類に書かれている程度。なーんて、偉そうなことを言ってますが、英語が苦手だった私は、南山大学に入って、みんな英語が出来る分、どんどん英語嫌いになり、卒業した当時は「英語で話しかけられたらどうしよう」状態でした。なので、このハンデを一気に挽回するために、会社を辞めイギリスに語学留学しましたが、大体基本がなってない私。なーんとなく英語っぽく話せるかなあ、くらいになった程度でした。英語っぽく話せたため(だと思う)、JTBの外国人旅行部で仕事をしましたが、いや~、他のガイドさんが外国人旅行者と冗談を言いながら笑ってるのを見て、どれだけ羨ましかったことか。だからと言って、がむしゃらに勉強するわけでもなく、またアメリカに留学し、そのままいつけないかなあ、という夢もはかなく消え、日本に戻ってきました。今度は名古屋に戻らず、東京に移りました。東京では、英語の方が日本語よりも話せるという、当時流行りの「バイリンガル」の友人と会社を始めましたが、「自分の背の高さを気にしないですむところで暮らしたい!」、という希望は捨てきれず、そしてようやくNYにたどり着いたというわけです。
NYに来て、自分のサイズの服や靴がどこででも買える嬉しさを満喫しました。が、最初の1年はきつかったですね。要領がわからない。電話ひとつつなげるのも、銀行口座を開けるのも泣きそうになりながらやった記憶があります。なんか自分がすごくバカになった感じ。親しい友達もおらず、家に帰ればひとりぼっち。自分の誕生日をひとりで過ごした時は、さすがにめげました。
でも元来楽観的な私。そして、何より私にとって楽だったのは自分の背を気にせずにすむ環境。これはたぶん太っている(と思っている)人にも言えると思います。日本では「気にしない」と思っても、大幅に規格外であることに対するイノセントなプレッシャーというのがありましたからね。そういうことを気にしないですむ環境にいると、自然なままの自分でいられて、日本にいた時は妙に肩に力が入っていたなあと思いました。なんか身も心も、のびのび~、としてくるのがわかりました。だから、現在の夫と知り合い、結婚したんだと思います。
夫はアメリカ人ですが、「Spadoni」という名前の通り、イタリア系(厳密に言うと、オーストリア)です。私達の家の周り半径3キロ以内に家族やら親戚やらが多数住んでいます。NYエリアにもかなりの親戚がいます。何かというとすぐみんなで集まります。夏はほぼ毎週誰かの家でバーベキューですね。冬もHBOで「Sopranos」をやっていた時は、毎週日曜日誰かの家に集まってみんなで見てました。私は、商社マンの父親は単身赴任、という母子家庭状態で育ったので、この、家族、というか親戚も含めた「family」単位で行動する、というのは新鮮な驚きで、最初はとってもとまどいました。今は、「なんで私のうち(実家)は親戚付き合いをあまりしないんだろう」って思うくらい、近くに家族がいて感謝することの方がはるかに多いです。
夫は、イタリア男性によくあるのですが、「お母さん命」です。(マザコンではありません。)私が言ってもきかないことを、お母さんから言ってもらうと、ちゃんとききます。ほんといい歳をした夫が素直にお母さんの言うこときくので、笑えます。基本的に男性は女性を大切にするように育てられていて、私はとても助かっています。
NYは、ぼーっとしていると身ぐるみはがれそうな、はやりストレスの多い社会です。(お金持ちは別でしょうけど。)やる気のない店員の態度、人が待っているのに平気でおしゃべりしてる郵便局員、人の話を聞かないカストマーサービス、来ると言った時間に来ないプラマ-、とまあ1日1回はムカつくことがある感じです。そして日本を懐かしく思ったりします。が、しかし、私はNYにいます。夫の「family」と1日中飲み食いしながらずーっと食べ物の話をすることも楽しいし、ヒールを履いても背筋をぴんと伸ばして歩けるのも嬉しいですからね。